山好記

登山やトレランやバックカントリー(や時々鳥見)にまつわる諸々をゆるく記すブログです。

手ぬぐい百名山 八ヶ岳(赤岳)

やっと探し当てた写真には日付が2010年8月5日とある。自分の意思で本格的に山登りを始め最初に登った山、そして初めて山手ぬぐいを買ったのが八ヶ岳の赤岳山行だった。

手ぬぐいの本来の使い方を考えれば手洗いすべきところだろうが、自分はどの手ぬぐいも日常的に洗濯機で洗い天日干し、どんどん使い込むのでこんな風合いになる。この変化も手ぬぐいの魅力だと思っている。

中央の日焼けは日干しの癖で、よく見ると繊維も薄くなり今にも破れそうだ。色合いも確かもっと濃い抹茶色だった記憶があるが、よく思い出せない。しかし今のこの色合いも好きだ。最初に購入したもので、使用歴も最も長く、使い込んだ跡が閉じ込められている。

山手ぬぐいとしても記念すべき第一号だが、一人で、山小屋(赤岳展望荘。風呂があることに衝撃を受ける)を利用し、縦走めいた山行をしたのもこれが初めてだったはずだ。縦走と言っても歩いたのは赤岳、中岳、阿弥陀岳だけだったが。

手ぬぐいを買ったのは確か赤岳頂上山荘だった(山荘のホームページを検索したらまだ同じものが販売されていた。今は紺色のみなのだろうか)。

初めての一人山行はほろ苦く、下山中に当時履いていたNike ACGの登山靴の右足のソールが見事にぱっくりと土踏まずぐらいのところまで剥がれ、なんとか行者小屋に辿り着き、事情を話すと親切な山小屋のお姉さんがダクトテープをくれ、それをぐるぐる巻いて下った。

当時は山の脚力と言うべきものが全くなく、美濃戸口に向かってボロボロの脚をひきづる様に降りている時、柳川南沢付近で、ノースフェースのピンクのハットを被った山ガール風のお洒落な女性に風のように抜き去られ、ままならない体力と歩き辛い登山靴も相まって、心で泣いた。

これ以上酷使すると破れそうで、今はほとんど出番のないこの手ぬぐいだが、手に取るといつも、地蔵尾根のきつい登りと、その先に広がる抜けるような青空、突き刺す日差し、寒さに震えながら飽きずに見続けた夕暮れ、山歩ききの厳しさと自由さ、そして下山後のこれまで続いてきた日常、ありとあらゆる事柄を呼び覚ましてくれる、不思議で愛すべき手ぬぐいだ。